AT車の踏み間違え事故と言えば、高齢者の認知機能の衰えから来るもので、免許返納を促すような論調になりがちです。

しかし、実際には年齢に関わらず起きる事故であり、下記のように20代であるあにも関わらず、死亡事故になってしまうケースもあるのです。ニュース記事を引用します。

軽乗用車が横転したはずみで…歩行者の男性が死亡

道路で車が横転して歩行者の男性がはねられ、死亡しました。

26日午前6時50分ごろ、山形県寒河江市で軽乗用車が道路脇のブロックに乗り上げて横転し、そのはずみで、道路を歩いていた近くに住む無職の土田庄吉さん(86)をはねました。土田さんは病院に搬送されましたが、約4時間半後に死亡しました。車を運転していた会社員の柏倉千寛さん(22)が軽いけがをしました。警察によりますと、柏倉さんは「大通りの信号待ちを避けるため市道に入った。アクセルとブレーキを踏み間違えた」と話しているということです。

軽乗用車が横転したはずみで…歩行者の男性が死亡

2018年10月26日 18時53分
テレ朝news

このケースでは、駐車場などではなく市道に入ったところで踏み間違いを起こしたと供述しています。ここから予想できるのは、ごく低速走行、つまりクリープ現象からのブレーキ操作を行うつもりだったということでしょう。ところが実際にはブレーキではなく、アクセルペダルを踏み込んでしまい、横転につながった訳です。

クリープ走行する際には、ブレーキペダルに足を軽く乗せていても、アクセルペダルに足を軽く乗せていても、車の動きとしてはまったく同じです。つまりこのケースでは、クリープ走行をする際に、右足を乗せる位置がブレーキペダルの時もあれば、アクセルペダルの時もあったのでしょう。事故の際はたまたまアクセルペダルに足を乗せていたのであり、頭の中ではブレーキペダルのつもりだったと思われます。こうした認知の誤りを起こした場合、AT車の場合はリカバリーする手段が設けられていません。サポカーで、踏み間違いサポート機能がついていたとしても、この件のようにおそらく斜めから突っ込んでいったり、変則的な構造の壁であれば正しく機能しないことも考えられるのです。

MT車であれば、万が一ペダルを踏み間違えてしまった場合でも、普段から使っているクラッチペダルを踏み込めば、それ以上加速していくことはありません。ところが、AT車では前進ギアの場、いっぱいにアクセルペダルを踏めば、理論上は際限なく加速していくことになるので、被害の規模は大きくなりがちです。

このように構造的な欠陥があるAT車では、踏み間違いの事故は毎年のように必ず発生しています。そろそろ、設計自体を見直す時期に来ているのではないでしょうか。自動ブレーキの延長のように小手先の電子デバイスで完全に防げるものではありません。踏み間違いを誘うようにしてから、付加機能によって踏み間違いを防ぐというのでは、マッチポンプのようで、どうにも誠実な姿勢とは言えません。