自宅付近こそ要注意

アクセルとブレーキの踏み間違いの可能性は低そうですが、痛ましい事故のニュースが入ってきました。
場所は滋賀県、大津市。住宅街の車庫付近で起こった、身近な事故です。

母親の車にはねられ、1歳男児死亡 大津

1日午後4時ごろ、大津市際川の住宅ガレージで、飲食店経営の女性(33)=同市大江=運転の乗用車に女性の長男(1)がはねられ、長男は頭を強く打つなどして搬送先の病院で死亡した。

滋賀県警大津署によると、現場は女性の両親宅。車には運転していた女性だけが乗っており、「車の前部が息子にぶつかってしまった」と話している。近くには女性の母親(55)もいたが、事故の瞬間は目撃していなかった。同署が女性から事情を聴くなどして事故の状況を詳しく調べている。

出典:産経新聞 2014年08月02日10時03分

 

慣れと安心感が悪いほうへ作用すると

この事故は、登場人物すべてが身内とも言える、場所も慣れた場所で起こった身近なものです。慣れたはずの環境の中で、なぜ死亡事故が起こってしまったのか。どこにそのきっかけが潜んでいたのか。そのメカニズムを少し探ってみたいと思います。

まず、このような過失、いわゆる「うっかりミス」による事故というのは、実は土地勘のない慣れない場所よりもむしろ、自宅周辺など身近な場所でこそ起こりやすいものなのです。その理由はやはり”安心”にあると言えるでしょう。慣れた場所、慣れた顔ぶれ、慣れた車。この慣れからくる無意識の安心感が問題なのです。この安心が、いつしか慢心になってしまい得るということです。

車は子供部屋ではありません

そして、次に子供の扱い方です。この事例のような乳幼児の場合、当然チャイルドシートに乗せることになります。特に歩き始めた子供や、歩き始める前でも予測のつかない動きをする子供の場合は何よりも最初に、チャイルドシートに着席させることが必要です。当然エンジンを掛ける前に着席させる必要があります。次に同乗者を乗せて、ドライバー自身も着席し、全員のシートベルト着用を確認します(この時点で半ドアーの有無なども確認します)。こうして初めてエンジンを掛けます。この順番を間違ってはいけません。よく、エンジンを掛けてゆっくりと車を動かしながらシートベルトを掛けている人がいますが、これは論外です。いわば、ジェットコースターが動き始めてから安全バーを下ろそうとするに等しい行為です。

実際にはこの事例では、いったん車を出すなり、向きを変えるなりしてから、子供をチャイルドシートに乗せようとしたことが推測されます。しかし、いかなる状況であっても、エンジンを掛ける前に子供を着席させないというのは危険です。

さらに、子供の背丈から考えると、運転席からは見えない状態だったことでしょう。ただでさえ車は死角が多いものですが、乳幼児ともなるとほとんどの位置からも見えないのではないでしょうか。ドライバーが身長の低い方であればなおさらです。だからこそ、エンジンを掛ける前に同乗者(乳幼児)を着席させるという順序が大切になる訳です。

特に乳幼児を持つお母さん、お父さんに気をつけて頂きたいのは車に対する意識面です。子供ができると、車のことを、より「部屋」として認識しがちです。オムツを替えたり着替えさせたり、食べ物を与えたりと、別荘ならぬ「別室」として車のことを捉えがちです。しかし、車はあくまでも物理法則に則って運動する、1トン超の鉄のかたまりです。子供はおろか大人でさえ簡単に殺めてしまう危険をはらむ道具な訳です。「銃を扱う」と言うと言い過ぎですが、それに近い危険物を子供のそばで使っているという意識を忘れないようにしてください。