アパートと車に挟まれ男性死亡 宮城・仙台市12/16(土) 18:28配信Yahoo!ニュース
アパートと車に挟まれ男性死亡 宮城・仙台市
16日午前、宮城県仙台市のアパートの敷地内で住人の50代の男性が建物と無人の乗用車に挟まれた状態で見つかりました。男性は間もなく死亡が確認されました。警察によりますと、16日午前9時15分ごろ、仙台市青葉区愛子東5丁目のアパートの敷地内で男性が建物と無人の乗用車に挟まれた状態で助けを求めているのを近所の人が発見し警察に通報しました。この事故でこのアパートに住む職業不詳の大場博さん(59)が腹などを強く打ち、仙台市内の病院に搬送されましたが、約2時間半後に死亡が確認されました。車は大場さん所有のオートマチック車で、当時エンジンがかかった状態で、ギアはドライブに入っていたということです。警察で事故の詳しい原因を調べています。東日本放送* 最終更新: 12/16(土) 18:28* KHB東日本放送

無人のマイカーに轢かれて死亡するという痛ましい事故が発生しました。これも、AT車の踏み間違い事故などと同様に、うっかりミス・些細なミスによって死亡事故まで繋がってしまったという一例でしょう。
日常生活においては些細なミスはよくあることです。TVのリモコンのつもりでエアコンのリモコンを操作しようとしたり、電気をつけるつもりが2度押してしまって消えてしまったりとか、経験のある方もいるでしょう。こうした生活上のうっかりミスであれば、笑い話で済みます。
しかし、車の運転となると違います。車の運行に関わる部分で操作ミスが発生すると、即座に人命に関わります。これまでにも何度も、我が子を轢いてしまった例や、家族を轢いてしまった例がニュースになりました。こうした例は、一義的にはミスをしたドライバーが悪いでしょう。しかし、「人間はそのようなうっかりミスをするもの」という前提で設計をしていない自動車メーカーにも責任の一端があるのではないでしょうか。


特に、自動化・電動化が進むにつれて、よりこうしたうっかりミスによる事故がが増えているように感じます。AT車が普及したことで、アクセルとブレーキの踏み間違い事故が注目されるようになったのも一例です。本件の事故も形は違うものの、根本的な原因は同じでしょう。
今回の事故で、直接の原因は、シフトレバーをD(ドライブレンジ)に入れたまま、サイドブレーキを強く引くことによって停車したことです。意図的にDのままにしたのか、うっかりPにし忘れていたのかは記事から伺い知れません。しかし、Dレンジのまま運転席から降りることが出来てしまうことが、車の設計ミスであると言えるのではないでしょうか。最近の車種や外国車では、Pレンジにしないとエンジンをオフに出来なかったり車外に出られなかったりする車もあります。しかし、旧来のMT車では、ギアを入れたまま停止することは構造上できませんでした。これがいわゆるフェイルセーフの設計となっていたのですが、後発のAT車ではこの設計になっていなかった訳です。これでは「ラクさ」をとって「安全」を蔑ろした設計と言われても仕方ありません。


こうした設計は、近年の電動化でも頻繁に見ることができます。例えばAT車のシフトレバーは、ボタン化が進んでいます。

確かに機械的にギアを動かすMT車とは異なり、AT車でのシフトポジション選択は電気的なものであるため、レバーの形状を引き継ぐ必要はありません。小さなボタンの方が内装のデザイン自由度も上がり、左右の座席をウォークスルーにすることも容易になります。しかし、シフトポジションの選択というのは、「走行に関わる重要な操作」です。停止している車を前進させる。前進している車を後退に切り替えるといった主要な動作を、ドライバーから指示する重要なインターフェースです。これをエアコンの操作ボタンのような形状にしてしまうことは、人間の直感とは異なります。小さなボタンでは直感的に重要なものだとは感じられないでしょう。つまり、このやや大きめな「レバー方式」というのは、人間の直感に寄り添っているという点で大切なデザインなのです。


その証拠とも言えるのが、プリウスなどに採用されているフリック式のシフトレバーです。ゲームのコントローラーのような小さなレバーで操作する同車種は、アクセルとブレーキの踏み間違い事故が多いことで知られています。これはペダルの設計の問題であったり、オーナーの年齢層であったり複合的な問題が絡んでるものです。しかし、前進と後退を間違えるなど、このシフトレバーの設計に原因の一端があるとみて間違いないでしょう。今後発売される車種でさらにボタン化が進めば、ボタンを目視してギアボジションを選択し、きちんとボジションが変わったかどうかをメーターパネルのギアポジション表示を目視確認するという、視線を奪う手順が必要になります。旧来のMTであれば、一度も視線を奪われる必要がなかったのにも関わらず、です。


このように、運転のラクさや生産効率を追求するあまり、安全性や人間の直感的により沿った設計を忘れてしまう例が増えてきています。
今回の事故のようなうっかりミスを、車側の設計で防げるように、メーカー側に分析して欲しいと強く願います。