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高速道路を走る自動運転トラックが実現しない理由

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高速道路を走る自動運転トラックが実現しない理由

自動運転は、東京五輪の2020年を目処に開発が加速していき、物流網が無人化するのも時間の問題である。このような楽観論が2010年代後半には支配的でした。経済評論家や一般マスコミのみならず、自動車評論家までもが、早いタイミングで自動運転、無人運転の未来がやってくるという論調を振り撒いていました。

ところが、現在では一気にトーンダウンしています。自動運転がそれほど簡単ではないことに気づいたからでしょう。当サイトでも再三懸念していた通りの、自動運転およびテスト車両での死亡事故が、これまでに複数発生してしまいました。どれも、原因は単純です。メーカーおよび技術者の想定が足りていなかったというのが共通する理由です。想定したいた技術範囲よりも、相当広い範囲の分野、とりわけ自然科学だけではなく、社会科学までをもカバーしないと、理想とする自動運転の社会は、実現できないことが分かった訳です。

すぐにでも実現できると思われていた、高速道路での自動運転、とくに商用車における物流改革は、いっこうに普及の目処が経っていません。既存の自動運転関連技術だけでは対処できない、運用面での問題が山積しているからでしょう。元トラックドライバーのライターが公表した記事を下記に引用します。

 

■トラックの「車間を空けすぎる問題」
こうしてノロノロ走るトラックの中には、前の車両と大きく車間を空けて走るケースもあり、一般車から更なるひんしゅくを買うことがあるのだが、実はこの「車間」にもちゃんと理由がある。「荷崩れの回避」だ。

 

「荷崩れ」とは、トラックの荷台に積んだ荷物が、振動や衝撃によって崩れてしまうこと。

ほとんどのトラックドライバーは、それまで培ってきた経験をもとに、積んでいる荷物の重さや積み方、道路状況、ブレーキの利き具合などから制動距離(ブレーキが利き始めてからクルマが完全に停止するまでの距離)を感覚で把握し、この「荷崩れ」を引き起こさずに止まることができるスピードと車間で走っている。

つまり、その大きく空いた車間は、チンタラ走ったがゆえの空間でも、他のクルマに前を譲るためのものでもなく、荷崩れせず安全に止まるためにトラックが必要としている大事な「パーソナルスペース」なのだ。

そんなスペースに、突然クルマが割り込んでくれば、当然トラックは安全な車間が保てなくなり、やむを得ず急ブレーキを踏むことになる。急ブレーキを踏んだトラックは、結果的に「前方の割り込み車との衝突」だけでなく、「後方の積み荷の荷崩れ」の危険性にも対峙することになるのである。

■荷崩れが引き起こす最悪な2つの事態
こうして急ブレーキを踏まざるを得なくなった際、トラックドライバーの脳裏には一瞬のうちに“荷崩れが引き起こす最悪な2つの事態”がよぎる。

一つは、「破損した積み荷の賠償責任」だ。

突然の割り込みに急ブレーキを踏み、そのクルマとの衝突を回避できたとしても、運んでいる大事な積み荷が荷崩れを起こして破損すれば、その後、トラックドライバーは「損害の賠償」という重い負担を背負うことになる。

ドライバーはハンドルを握って走っているだけが仕事ではない。彼らの本当の役割は「トラックの運転」はもちろん、「荷物を安全・無傷・定時に届けること」。こうした立場から、荷物が破損した際の賠償は、トラックに荷物を積み込んだ時点で、「運ぶ側」が負わされることがほとんどなのだ。

運搬する荷物の中には、筆者が積んでいた金型や、慎重な扱いが求められる精密機械など、その額が「億」を軽く超えるものもあり、破損した際の損害額も巨額になる。そのため、危険運転を繰り返す悪質な一般ドライバーによって引き起こされる荷物事故を少しでも食い止めようと、最近ではトラック車内にドライブレコーダーを搭載し、その車両を特定しようとする運送業者も増えてきている。

もう一つの“最悪の事態”は、「身の危険」だ。

急ブレーキを踏んだトラックは、前方のクルマとの衝突を回避できたとしても、後ろに積んだ荷物が「慣性の法則」によって前になだれ込んでくることで、運転席が潰れたり、バランスを崩して横転したりする危険に晒される。

■右足の「ひと踏み」で簡単に吹っ飛んでしまう
筆者もかつて、縦3メートル、横1.5メートルにもなる板状の金型を積んで高速道路を走行している際、急ブレーキを踏んで大規模な荷崩れを起こしたことがあった。走っていた道が緩やかな上り坂だったので、荷物が前に滑り込むことはなかったが、もしそこが平らな道路だったらと思うと、今でも腰のあたりが異様に疼き始める。

トラックドライバーももちろん、こうした荷崩れ対策のために手間を掛け、工夫を凝らして日々荷積み作業を行ってはいるが、残念ながらこうした努力は、右足の「ひと踏み」で簡単に吹っ飛んでしまうことが多い。

トラックドライバーにとって急ブレーキを踏む瞬間は、何を載せていたか、しっかり固定していたか、損害額はいかほどかなどを考えたり、時には「前への衝突」と「後ろからの衝撃」を天秤にかける瞬間ともなる。トラックは、走らせるよりも「止める・停める」ことのほうが、技術的にも精神的にも難しい乗り物なのだ。
(フリーライター 橋本 愛喜)

引用元;livedoorニュース

 

 

この記事では、トラックドライバーならば誰もが当然に行っている業務ですが、自動運転の開発者が想定していない部分が多岐にわたって示されているのではないでしょうか。

「ぶつからずに目的地まで走れば、それでいい。」この想定では、いかにも甘いということが分かります。荷崩れ事故を防ぐためには、積み荷についての予備知識が必要になります。荷物の種類や梱包状況、さらに重量や積み方を把握しておかないと適正な速度と車間距離は決められないでしょう。

さらに、致命傷とも言える急ブレーキを避けるために、割り込みをしそうな車がないかを周囲を見渡して確認するといったことも、現段階では難しいでしょう。AIの画像認識機能が相当高まらないと予測しながらは難しいものだと思われます。

また、記事にもある通り、物流においては遅く到着することだけでなく、早すぎる到着もペナルティの対象となるケースがほとんどです。人間のドライバーならば、待機場所を(グレーゾーンの場所も含めて)探して待っていることもできます。無人の自動運転には難しいのではないでしょうか。しかも、この問題の根本原因は、荷主や物流企業の商習慣、トラックを支える道路インフラの不足、法律の不整備などにありますので、トラックだけが自動運転になったところで解決することはなく、むしろ問題があぶり出されるだけ、という可能性もあります。

自動運転社会を実現するには、技術・テクノロジーだけに目を絞るのではなく、現場を見て運用面を見て、社会学にまで視野を広げることが不可欠なのではないでしょうか。

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