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自動運転バスがパラリンピック選手を負傷させる

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東京オリンピックとパラリンピックが、すったもんだの末、開催されました。感染症対策を廻っての賛否だけでなく、予算の不透明さや不適切な発言など、過去に類を見ないほどのゴタゴタが起こった大会であったと思います。

そんななか、自動車メーカーにおいては大きな試金石となる取り組みが行われていました。それが、自動運転バスの稼働です。もちろん、これは試験的なものであり、現在市販されている車両はもっとも高くて自動運転レベル3のものであるため、完全な自動運転だとは考えられていません。それでも、トヨタが最新技術を用いて、対外アピールもかねて力を入れたものです。ところが、この自動運転バスで、人身事故が起こってしまいました。まずは、記事をご覧ください。事故発生を知らせる速報記事に続いて、わずか数日後の運転再開を報じた記事を引用します。


●【独自】自動運転の選手村バス、横断歩道渡る柔道・北薗選手と接触 2021年8月27日 15時47分読売オンライン

東京都中央区晴海の東京パラリンピック選手村で26日、柔道男子の北薗新光(あらみつ)選手(30)が、自動運転中の巡回バスに接触し、頭などに全治2週間のけがを負ったことがわかった。

 北薗選手は視覚障害があり、警視庁月島署が詳しい状況を調べている。

 月島署幹部によると、北薗選手は26日午後2時頃、選手村の横断歩道を渡っていたところ、右折してきたバスと接触した。バスは食堂や居住棟などを24時間運行する電気自動車で、事故当時、オペレーターが乗っていた。

 北薗選手は3大会連続で代表に選ばれ、メダルの有力候補として、28日の男子81キロ級に出場する予定になっている。

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●選手村自動運転バス、31日再開 手動操作やスタッフ増など対策

 トヨタ自動車は30日、東京パラリンピックの選手村(東京都中央区)で柔道(視覚障害)男子81キロ級の北薗新光選手が自動運転中の巡回バスに接触した事故を受けて見合わせていたバスの運行について、必要な対策を講じた上で31日午後3時に再開することを大会組織委員会が決定したと明らかにした。 

 同社によると、加速、減速、停止は手動で行う▽接近を知らせる通報音の音量アップ▽搭乗員や誘導員の増員――などの対策を講じるという。 

https://news.yahoo.co.jp/articles/45f465aa47c17233c229b373d29a4c4bc6d7e13b


これは非常に状況が悪い事故だと言わざるを得ません。まず第一に、トヨタとしては細心の注意を払って運行したはずの環境で、事故が起こってしまったということです。東京で約半世紀ぶりに行われるという国際イベントで、自動運転バスをつつがなく運行することは、諸外国に技術力を見せるという狙いがあったはずです。そのためか、運行を選手村の中だけと限定して、速度もごく低速。非常時に対応するために、無人運転ではなくオペレーターを乗車させての運行であったようです。このことから、万全を期して慎重に望んだ姿勢が見てとれます。しかし、事故は起こってしまった。

第二に、被害者は競技を翌日に控えていたパラリンピック選手であったということです。視覚機能に障害がある選手が、横断歩道を横断する際に転倒させてしまったとのことで、状況は非常に悪いと言わざるを得ません。結果として被害を受けた選手は競技出場を断念することになってしまいました。

第三に、事故後の対応が悪手であったことです。2つ目に引用した記事によると、事故からわずか数日で、運行を再開しています。しかも、改善策を講じての運行といいながら、まったく原因が解決されていません。事故の原因は、オペレーターのせいではなく、明らかに自動運転を制御するシステム、いわゆるADASに致命的な問題があったのは明らかです。横断歩道のある市街地様の道路を走行させる場合、もっとも避けなければならないのが人間を傷つける動きです。

過去テスラ車でも、自転車を押して道路を横断する女性を、人間だと認識できずひいてしまい、死亡事故をおこしました。今回のトヨタのバスでは、横断歩道を渡ろうとする車いすの人を、人間だと認識できなかった可能性が高い訳ですから、さらに深刻です。道路上を横断するような動きは、例えシステムが人間だと認識できなかったとしても、安全側に振るのが当然です。つまり、僅かでも人間である疑いがあれば、停止する、といった制御です。これが、まったくできていなかったことが明らかであるにも関わらず、トヨタはその根本原因を解明することなく、システムの代わりにオペレーターが操作するというということで、問題に蓋をしてしまいました。

この姿勢は非常に問題で、トヨタは、技術に取り組む姿勢を見せず、人命を奪いかねない欠陥をそのままにし、対外アピールの方を優先した訳です。少なくとも、そのように受け取られても仕方がありません。

付け加えると、このバスは電気自動車であるようで、視覚障害を持った人や高齢者にとっては、車両の接近を感じることができません。近年のEVやハイブリッド車では、対策として電子音を鳴らしながら走るものもありますが、これでは不十分なのです。エンジン駆動の車のように、加速量に応じて音のボリュームがリニアに変わる訳ではないので、どの程度の危険度なのかが、直感で分かりにくいのです。エンジン車であれば、音だけでも大きな車なのかそうでないのかというところも分かりますので、直感的です。

このように、近年進んでいる技術は、「技術のための技術」であって、人間のための技術にはなっていないように感じられます。今回の自動運転バスの一件で、より世間の人の新技術への期待感と、トヨタへの信頼感は薄らいだと思います。トヨタにはぜひ初心に立ち返ってもらうことを期待します。

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