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9歳児運転の車が衝突、事故の背景は

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9歳児が親の車で暴走事故を起こしたようです。ニュースによると、盛岡市の幹線道路を2キロに渡って走行し、通報を受けたパトカーから逃走。そのまま停車中の他の車に衝突したということです。下記に記事を引用します。


9歳児運転の車が衝突事故 盛岡、パトカーが追跡中に 引用元;2021年6月5日 共同通信

 5日午後5時半ごろ、盛岡市北山の国道4号の交差点で、同市に住む男児(9)が運転する乗用車が停止中の軽乗用車2台に玉突き衝突し、1台を運転していた30代女性が首に軽傷を負った。車は、事故の約10分前に「子どもが車を運転している」と110番を受けた岩手県警のパトカー数台が、約2.1キロにわたり追跡中だった。

 盛岡東署によると、車は約30~40キロの速度で蛇行や一時停止を繰り返し、Uターンをしていたという目撃情報もある。

 男児は自宅で親が目を離した隙に、1人で車に乗り込んだという。110番直後に、車と鍵がなくなっているのに気づいた親が警察に通報した。


テレビニュースでも取り上げられていたこの事故は、やはり9歳児が運転していた、という点で特異性があります。児童は、何らかの手段で車のキーを手にし、車に乗り込み、親の運転動作を見て車の始動の仕方を知っていたのか、車を動かし公道を走り抜けていったようです。車の始動方法はキーを捻る方式ではなく、プッシュスタート式であったそうです。また、現在の販売比率から見てもAT車だとみて間違いないでしょう。

AT車の唯一といえるメリットは、「習得の簡単さ」です。MTはタイヤへの動力伝達具合を無段階に選べる点と、AT車でいうところの「走行モード」も無段階に選べる(高燃費寄りや高出力寄り等)という点において、現状においてトランスミッションの最上位版であると言えます。ここから、ある程度の走行品質を犠牲にして、その代わりに習得を非常に楽にしたトランスミッションがAT車です。ペダルをひとつ減らし、レバーの常時操作を無くしたのですから、分かりやすいメリットです。ところが、上記の通り、MTに比べると走行品質が劣る(ドライバーが任意に選べる範囲が狭い)ことと、本件事故の遠因となった「簡単さゆえのデメリット」があることもまた事実です。

現代の小中学生にとっては、操作を覚える対象は主にゲームやスマホになっています。いわゆる車の運転に関しても、例えば「マリオカート」の方が、実際の車よりもきっと馴染みがあるでしょう。マリオカートであればクラッシュしてもタイムロスが発生するだけで、大きな問題にはなりません。しかし、実際の車でコースアウトしたり、他車とクラッシュすると、刑事や民事で責任を問われることになります。他人や自分が怪我をしたり死亡したりする場合さえあります。仮想世界と現実世界はこれほど大きな差があります。ところが、「操作」の難易度において、それほどの「差」はあるでしょうか?これは個人的な感覚ですが、AT車の運転よりも、マリオカートの方が難しい場合もあると思っています。もしこの感覚を子供が持っていたら、親が運転するAT車をみて、簡単そうだ、と過小評価する可能性もあるでしょう。

命に関わるような、重大なものになるほど、訓練が多く必要で難しくなる。これが直観に従った流れではないでしょうか。ところが、実際には現代の車の運転は、場合によっては、はじめて自転車に乗れるようになるまでの練習より、簡単にできてしまう可能性すらあります。始動するのもボタンひとつ。ギアもボタンやレバーを合わせるだけ。ペダルを無造作に踏めば100km以上の速度を出すのも簡単です。動画投稿サイトには、海外の例ですが、ペットの犬に運転させているものさえあります。

数十年前であれば、このような事故は見られませんでした。なぜなら、大半がMT車であったからです。エンジンを始動するのも、クラッチ操作を伴うペダル操作も、変速して加速していく操作も、小さな子供にとっては単純に難しいからです。自転車に乗る練習よりも、確実にMT車に乗る練習の方が難しいものであったはずです。より危険な乗り物の方が習得が難しい。この直観に沿うものでした。MTの「習得の難しさ」、または発進や変速の面倒くささが、ある種のハードルの役目を果たしていたわけです。そのような状況であれば、本件もおそらく発生していなかったのではないでしょうか。動画サイトなどを見れば自主習得も可能とはいえ、MTの操作を練習もなくマスターするのは不可能ですし、もしそこまでするのならば、何らかの余程の意図がないと成立しません。興味本意で本件のような事故を起こすのは難しいでしょう。このことは、池袋で発生した高齢者暴走事故においても言えます。MTの操作の煩雑さがハードルの役目を果たしたはずなのです。高齢者の事故においては、MTを問題なく運転できるかどうかは、ひとつの合理的な線引きとなりうるものでしょう。

近年になって、再び新車でのMT車が登場しはじめています。自動車メーカーとしてもこれまで、単純に「便利さ」のみを追求してきたがゆえのしっぺ返しが社会問題化してきたことで、その姿勢を変えつつあるのかも知れません。

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