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自動運転車は「怖くて乗れない」ー米国

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自動運転車の一番の課題とは?

自動運転車の開発が世界で進んでいます。技術的な開発は進んでいますが、果たして消費者側の受け入れ態勢も進んでいるのでしょうか。米国では自動運転の実証実験における事故が相次いで発生し、その結果、米国のドライバーの間で自動運転車に対する不信感が高まるという事態になっているようです。まず記事をご紹介します。

自動運転車は怖くて乗れないという意見が70%超

【ニューヨーク共同】自動車メーカーやIT企業が開発中の「完全自動運転車」について、米国のドライバーの73%が「怖くて乗れない」と考えていることが、米国自動車協会(AAA)が4月に実施した調査で分かった。2017年末時点の調査では63%で、完全自動運転車に対する不信感が急激に高まった。

今年3月、公道試験中の米配車大手ウーバー・テクノロジーズの自動運転車と歩行者の女性が衝突し、女性が死亡するなど米国では自動運転に関係した事故が相次いだ。AAAは「自動運転が注目を集める中で多数のメディアが事故を報道し、安全性への懸念が強まった」と分析している。

「怖くて乗れない」との回答を性別でみると、女性が83%、男性が63%だった。世代別では、1980年代以降に生まれた「ミレニアル世代」の不安が高まっており、17年末の49%から64%に急上昇した。

産経フォト 2018.5.29

予想されていた事故が多発

全世代において、過半数のドライバーが、自動運転は信頼できないと回答したことになります。女性に至っては8割超の方が乗りたくないという回答をしており、これは重大な結果です。

自動運転車では、実験段階でもこのような事故が発生することは予想されていました。現在の技術、つまりAIや電動化技術を中心にしたITやロボティクスの分野では、事故の発生をゼロにすることはできません。「閉じた系」である工場内でモノを生産する産業機械でさえも、エラー率を完全にゼロにすることはできていません。ましてや「複雑系」である道路交通の世界では、事故をゼロにすることは当面、不可能であるというのが一般的な見方です。

日本やドイツではこのことをよく理解していて、もし自動運転の実験中に事故が発生した場合にどう世論が動くのかも予測していたため、相当慎重に実験を行っていました。クローズドなテストコースに限ったり、公道を使う場合は複数の担当者が乗り込んで立ち会ったうえで、ごく低速で走行するなど、細心の注意を払うことが実験段階では必要です。

「人命よりも技術の向上が先」の姿勢に嫌悪感

ところが、開発競争に焦ったのか、それとも米国の国民性なのか、実証実験が性急であった感が否めません。特にGoogleの自動運転実験車のように、ハンドルもペダルも持たない自動運転車をデモンストレーションしたのは失敗でした。上記のように、万一のことが起こるのが現実世界ですが、ハンドルもペダルも持たない車というのは、いざという時に乗員が何の回避行動も取ることができないということを意味します。これは人間の直感に反していて、強い恐怖を与えるものです。

つい先日も日本国内で、高速道路を走行中のバスの運転手が、急病によって意識を失い、乗っていた乗客が3人がかりで停車させて事なきを得たという例がありました。これも、直感的な操作系であったからこそ、とっさに乗り合わせた乗員がハンドルとペダルを横から操作して緊急回避ができた訳です。もしこのバスが、これらの緊急の運転操作を直感的にできない、つまりバックアップの機械的な操作系統を持たない自動運転車であれば、そのまま大きな事故になっていたでしょう。

つまり、このアンケート調査の意味は、ただ事故が発生したから自動運転車に乗りたくないという回答になったのではないということです。そうではなく、人間の直感から離れていく道具、それも殺傷能力を持った車という道具に、拒否反応を示しているということです。

現在は、ある意味で「IT企業による技術のショールーム」となっている自動運転車の開発競争ですが、このことを重く受け止める必要がありそうです。

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