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AT車でも積極的にギアチェンジを活用すれば運転が楽しい!

AT車シフトノブイメージ画像AT車とMT車
AT車シフトノブイメージ画像
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ATの変速は機械任せ?

ギアチェンジをする、といえばマニュアル車ならではのものと考えるのが普通かもしれません。しかし、AT車でも実は手動でギアチェンジすることができます。しかも、積極的にギアチェンジをすることでAT車でも、機械任せにした場合よりも遥かに状況に沿った上手な運転ができるようになるのです。

Dレンジ以外を使う意味はあるのか

AT車には、ギアレバーがあり、通常はD(ドライブ)レンジに入れて走行します。車種によっては、それ以外にパドルシフトがついている場合があります。これについては後述します。車種にもよりますが、Dレンジ以外にも走行レンジが用意されていることが多いはずです(P、R、Nレンジは除外)。例えば、3、2、L、S、Bなどのマークがあるギアポジションです。

  • D:1〜4速(車種によって5速以上)でのオートマチック変速
  • 3:1〜3速でのオートマチック変速
  • 2:1〜2速でのオートマチック変速
  • L:1速ギアに固定
  • S:スポーツモード等、変速タイミングを遅らせる(=エンジン高回転を使う)モード
  • B:ブレーキ、エンジンブレーキを活用するモード

メーカーや車種によって呼び名や機能が異なります

AT車では、確かにDレンジに入れておきさえすれば、何の問題も起きずに走行することができます。しかし、このように、ギアポジションが設けられているということは、使う意味があるということです。

エンジンブレーキ以外の意味は薄れつつある

D以外のレンジが設けられている理由は、AT車の構造にあります。AT車は、言い換えると、自動変速機です。変速という仕事が無くなった訳ではなく、機械が人間に代行して行っているということです。ところが、人間がMT車を扱うように、AT車は変速をすることができません。なぜならAT車は、路面の傾斜や渋滞状況、進む先の信号、自転車や歩行者の有無など、周囲の様子を見てギアチェンジしている訳ではないからです。では、どのようなタイミングでギアチェンジしているかと言うと、運転者が行うアクセルの踏み具合に応じて、最も早いタイミングで一段上のギアへとシフトアップします。このようなタイミングに設定(プログラム)されていますので、ドライバーがそのタイミングをコントロールすることは基本的にできません。アクセルの踏み具合でギアをコントロールできると思っている方もいますが、実際には難しいものです。なぜならアクセルペダルの主要な仕事は加速すること、つまりスロットルの開度を調節することだからです。変速タイミングを決めるのはあくまで機械です。要するに、自動車メーカーが設定した変速タイミングに沿った運転しかできない訳です。
普通は、最も燃費の良くなる変速タイミングが設定されているため、普段は困ることはありません。ところが、場面によっては、この変速タイミングが仇となることがあるのです。
それが顕在化した現象が、いわゆる高速道路の「サグ渋滞」です。そして、もう一つは、長い下り坂でのエンジンブレーキです。この2つについて見ていきましょう。

高速道路の緩やかな上り坂では絶対に活用

高速道路の長い上り坂では渋滞が発生しやすいと聞いたことがある方も多いでしょう。これはいわゆるサグ渋滞と言って、混雑による渋滞とは区別されます。長い上り坂だと、坂だとは気がつかないことがあります。ドライバーは平地のつもりでアクセルペダルを一定にしていると、速度は徐々に低下していきます。ここで、1台だけなら問題にならないのですが、後続車が複数いる場合は、ブレーキを踏まなくてはならず、さらに後ろの列へは徐々に減速度合いが増幅して伝わっていってしまいます。特にその手前が下り坂になっていると、後続の車列は余計にブレーキを早く踏まなくてはならないので、すぐに渋滞になります。これによって、交通量自体は道路の許容範囲内であるにもかかわらず、渋滞が発生してしまうのです。

これには、AT車のメカニズムが大いに関わっています。AT車は基本的にメーカーが設定したシフトタイミングでしか走行できません。燃費を向上させるために、なるべく長い時間を、高いギアで過ごそうとするのが普通です。そのため、高速道路では一度トップギア(5速、車種によってはそれ以上)までシフトアップされると基本的にはシフトダウンされません。シフトダウンされるのは、次のケースに限られます。

  • キックダウンした場合(アクセルを踏み込む)
  • 手動でシフトダウンした場合(ODオフ、3、2等)

キックダウンとは、アクセルペダルを強く踏み込むことによって、低いギアへとシフトダウンさせるための操作です。このキックダウンは車種にもよりますが、かなり踏み込まないとシフトダウンしないことが多いのです。これも燃費を意識したからこその設定でしょう。また、激しい運転に思えるからか、特に女性はキックダウンをあまりしない傾向があるようです。

一方、手動でのシフトダウンは、レバー(またはボタン)を動かしたら、強制的にシフトダウンされます。シフトダウンするには、この方法が確実です。上記のキックダウンでは、微妙なアクセル操作がしにくく、シフトダウンした後でも加速しすぎになりがちです。
このように、サグ渋滞とは、ほぼAT渋滞と呼んでも良い、構造的なものです。渋滞の原因とならないためには、手動でシフトダウンすることです。
ただし、傾きセンサーやカメラなどによって傾斜や路面を感知して最適なギアを選択するATも登場しています。いずれにしても、ドライバーとしては、きちんと路面状況に注意を払い、速度をしっかりと確認することです。

自動運転へ向けて

最近では僅かなアクセルペダルの踏み込みでも積極的シフトダウンしたり、傾斜を感知してシフトダウンする車もあります。いずれにしても、スピードメーターでしっかりと速度を確認することが必要です。また運転支援機能のひとつ、AAC(アダプティブ・オート・クルーズ)も一定速度を保つうえで有効です。

山道の長い下り坂ではエンジンブレーキを活用

山道などの長い下り坂では、エンジンブレーキを活用するための手段としてのシフトダウンが有効になります。従来型のAT車の場合、高いギアを選択しがちである上に、トルクコンバーターという流体クラッチの仕組み上、エンジンブレーキを効かせて坂道を下るのが難しかったのです。そのため、ODオフを始め、3、2などのエンジンブレーキ用のポジションが用意されていました。
近年では、ロックアップ機構(そのままのギアで走り、シフトアップを控える)が発達したため、比較的エンジンブレーキの利き目を享受できるようになりました。このため、以前のような3、2といったポジションではなく、ひとつだけSやBなどブレーキ専用のポジションが用意されることが多くなっています。ロックアップによって、ある程度坂道ではアクセルオフだけで減速できるのです。 ただし、低いギアでエンジンブレーキを効かせるためにロックアップしたままにしたいのか、それとも一段上のギアにシフトアップしても良いのかは、まだうまく制御できません。ドライバーの操作はアクセルをオフにしただけですから、直結してそのままのギアを保つのか、一段上のギアにするのかは機械が決めることになります。
そもそも、ドライバー個々の感覚や趣向によって、下り坂では一段下の強めのエンジンブレーキの方が安心できるのか、それとも一段上のギアでフットブレーキを併用しながら走った方が運転しやすいのかは、異なります。ですから、一律に傾きセンサーやカメラなどのセンシングを行っても、オートマチックな制御がうまくいくとは限らないのです。将来的にはAIが搭載されて、ドライバーの運転志向を学習する可能性はあります。
いずれにしても、現段階では手動でシフトダウンを行って、エンジンブレーキを活用した方が、より安心して下り坂を走行することができます。

パドルシフトがついた車ではタコメーターを意識して

パドルシフトがついた車種はかなり増えています。ハンドル横のフリップを手前に引くことでギアチェンジができる機構です。このパドルは、MT車のシフトレバーとは違って機械式ではありません。電気的なスイッチとなっていますので、さほど丁寧な操作に神経を注ぐ必要はありません。
また、従来型のATにしても、CVTの擬似的ギアにしても、DCTなどの2ペダルMTにしても、気を使うべき点はエンジン回転です。そもそもトランスミッションにおいて変速をする理由は、好みのエンジン回転を使うためです。エンジンはモーターなどの動力源とは異なり、低回転と中回転・高回転ではそれぞれ力と速度の出方にムラがあります。その車種のエンジン特性に合わせて、最適なエンジン回転を使いたいがために、ギアチェンジしてエンジン回転をコントロールする訳です。ですから、その車種のエンジン特性とギア比を理解していないと、適切なタイミングでの変速できません。

MT車の場合、否が応でも変速していかないと流れて乗って走れませんから、いろいろなシーンを走るうちに、その車種のエンジンの特徴と最適なエンジン回転域が体感的に分かるようになります(それが分からないままの方は、いつまでたっても下手な運転だという印象を同乗者に与えてしまいます)。一方で、AT車では普段、変速は機械に任せっきりで走行する人が大多数です。その方が楽ですし、破綻もしないのですから、当然です。ところが、そういう方が急にパドルシフトで変速しようとしても、エンジンの特性やギア比に普段から注目していないため、上手に運転できないことがほとんどです。近年のAT車はほぼ全てが燃費を最優先した走行モードが通常となっていますから、Dレンジで走行しているときに使われているエンジン回転域は、エンジン本来の許容範囲の30%程度です。それ以上の回転域で走ることは滅多にない上にギア比についても普段は意識しないため、急にパドルシフトを使ったからといって、意のままにエンジンを操るのは困難です。この意味でも、教習所に通う段階では、どちらでも対応できるMTコースを選択することをおすすめします。

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AT車で教習がうまくいかない方のほとんどに共通する、根本的な原因とは、「ブレーキ操作」にあります。AT車には、AT車ならではの習得過程がありますし、免許取得後の楽しみ方もAT車ならではのものがあります。この機会、きちんと知識を深めておきましょう。
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