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エンストとは?

教習所でエンストするイメージAT車とMT車
教習所でエンストするイメージ
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MT車が敬遠される原因のひとつ、エンストについて

このページでは、エンストとは何か、またその原因について詳しくご説明します。MT車でもAT車でもエンストは起こりますが、操作ミスに原因があるエンストはほとんどMT車です。

エンストすると、どんな風になる?【動画あり】

MT車の操作ミスによるエンストは、下記の動画のようになります。キーはエンジンONの状態で、エンジンが掛かっていない状態ですから、「エンジンチェックランプ」「油圧警告」「排気温警告」などが点灯します。

エンストすると、どのくらい恥ずかしいの?

教習所ではMTコースの場合、エンストしてしまうことは普通です。主にクラッチ操作が不慣れであることが原因で、エンストしてしまうのが一般的です。教習所で他のハンドル操作などと同様に、当然クラッチ操作も不慣れですので、エンストは起こり得ます。免許を取得した後に、初心者期間で運転に慣れる時間を経て、徐々にエンストしなくなります。しかし、公道ではMT車に乗る人は慣れている人が多いこともあり、道路上でエンストの場面を見かけることはあまりないでしょう。かつては、急に路上でエンジンが止まってしまうことで、恥ずかしさと焦りを感じてしまう初心者ドライバーが多かったのが事実ですが、現在は心配することはありません。低速や停止時にアイドリングストップする機能があったり、ハイブリッドやEV(電気自動車)が一般化したことで、現在はエンジンが止まることにそこまで違和感はありません。

エンストって、そもそもなに?

エンストとは「エンジン・ストール」の略です。よく間違われる「エンジン・ストップ」ではありません。言葉の通り、エンジンが止まってしまうことです。とりわけ、自分でエンジンをオフにするのではなく、何らかのトラブルによってエンジンが「止まってしまう」ことを意味します。トラブルの内訳としては、大きく分けて「運転ミス」と「整備不良」があります。運転ミスはMT車がほとんどですが、僅かにATでも起こります。また整備不良によるエンストは、MT・ATに関わらず起こり得ます。

エンストは誰がするの?

運転ミスに関しては、基本的には、MT車がエンストしやすいと言えます。MT車は、エンジンの回転を(タイヤを介して)路面に伝えるとき、クラッチという接続・分断の操作を人間が操作するペダルを使います。この操作が急だったり荒かったりすると、タイヤに力を伝える前に、エンジンの回転力が負けてしまい、エンストします。ATはこの動力接続・分断を機械が行うため、通常の走行ではエンストしません。

<模式図>
1)エンジン -[| |]-タイヤ:路面
2)エンジン -[|]-タイヤ:路面

上記は、エンジンからタイヤへ動力を伝える途中に「クラッチ」があることを示しています。最終的にはタイヤが路面と接地して、動力を伝えることでクルマは走ります。エンジンはすでに回って(動いて)います。これがアイドリング回転(停止状態で回っているエンジン回転数)です。しかしタイヤは止まっていますので、エンジンの回転を伝えてタイヤを回転させなければいけません。この伝達役がクラッチ板です(図で離れたりくっついたりしている板)。
1は、クラッチが離れていて、エンジン動力がタイヤに伝わっていない状態。動力伝達は0%。つまりクラッチペダルを踏んでいる状態です。
2は反対にクラッチがつながっていて、エンジン動力がタイヤに100%伝わっている状態。クラッチペダルから足を離している状態です。
発進操作に必要な、いわゆる「半クラ」は1と2の中間、つまり50%や40%と言った中間程度に、エンジン動力をタイヤに伝える操作です。

エンストはいつするの?

エンジンに最も大きな力が必要とされるのは、発進時です。停止している車を発進させるときに、クラッチ操作がラフだとエンストしてしまいます。クラッチ操作によって、走行中にエンストすることはあまりありません。また、走行状態から停止する時に、速度が落ちてきたにも関わらずクラッチペダルを踏まないままだとエンストします。
AT車では、急な坂道などでDレンジ(通常走行ポジション)のままアクセルを踏まず、後ろに後退してしまうとエンストにつながることがあります。選択しているギアポジションとは逆方向に進み続けるとエンストしやすいので、AT車でも注意しましょう。AT車のエンストで事故やトラブルは3年間で111件発生、ほとんどが坂道だそうです(詳しくはAT車エンストのニュースを参照)

どこでエンストしちゃうの?

運転ミスによるエンストは、場所によらずどこでも起こり得ます。エンジンを掛ける際、ギアを入れてクラッチペダルから足を離したままでいると、エンジンが掛かった瞬間にエンストします。(※これを避けるために、クラッチを踏んだ状態でないとエンジンが掛からない仕組みが多くの車に搭載されています)
整備不良によるエンストは、信号停止時などが多いようです。エンジン不調やアイドリングのトラブルによるものが多いのですが、信号で減速した場合や信号待ちでの停止中にアイドリングが不安定となりエンストします。また、バッテリーなどの電気系統のトラブルでもエンストします。整備不良によるエンストの主な原因は次のようなものです。

  • バッテリー関係
    • 端子外れ、ショート、バッテリー上がり・オルタネータ不良(少ない)
  • 燃料切れ
    • いわゆるガス欠。燃料経路のトラブルも。
  • アイドリング不良によるエンジン回転の乱れ
    • エアフロセンサー、ISCバルブ、スロットルバルブ、その他センサー類の不調、パイプ類の抜け、ECU不良など。

エンストで慌てないで!

  • ブレーキペダルが重くなります。またハンドルも重くなります。これは、エンストすると、エンジンによって駆動するこれらの機構が機能しなくなるためです。※全ての車種がそうなる訳ではなく、採用されている機構により異なります。ただし、ブレーキもハンドルも非常に重いものの、力を入れれば効きますので応急の対処はできるでしょう。
  • またMT車で走行中、信号待ちのために減速し、クラッチを踏まずに停止しようとすると、車は急激に止まります。後続車がいる場合は危険ですので、後からでもクラッチを切って惰性で動きながら、ブレーキで止まるのが無難です。

エンストしたらどうすればいい?

エンストした後でも、深刻な整備不良でなければ、エンジンは再始動できるはずです。慌てずにエンジンを掛け、警告灯類を確認しながら進みます。
もし整備不良やトラブルによって、エンスト後にエンジンが掛からない場合は、バッテリーが生きているかを確認します。バッテリーが生きていれば、ハザードランプをつけられますので、速やかに後続車に知らせます。MT車ならば、ギアを1速に入れてクラッチペダルをつないだ状態で、キーを捻ってクランキングさせるとセルモーターで移動できることがあります。バッテリーに過大な負担を掛けますので、長い距離は無理でしょう。緊急待避用として覚えておきましょう。
バッテリーが生きているのにエンジンが掛からない場合は、プラグが被ってしまっているケースもあります。すぐには掛かりませんが、放置した後に掛かる場合もあります。
万一バッテリーが生きていなければ、ハザードランプも付けられませんので、トランクを開けたり、三角表示版を立てたりして、必要であれば発煙筒を炊いて後続車に知らせましょう。二次的な事故だけは何としても避けなくてはいけません。交通の妨げになっている場合は、110番で警察に支援を依頼し、JAFなどのロードサービスを利用することになります。このような場合に無理は禁物ですので、安全を第一に行動すべきです。

エンストの対処(高速道路など)

高速道路上での車両トラブルの場合、速やかに交通の邪魔にならない場所に移動しなければいけません。しかし、エンストしてしまった場合は、移動ができないこともあります。そのような時は、 速やかに後続車に知らせる必要があります。そのためには、下記のグッズを常備しておくと役立ちます。

  • 三角停止板
  • 反射ベスト
  • 誘導灯

いずれもトランクに積んでおけますし、特に夜間はリフレクターがあるとないとでは、生死に関わる差が生じます。そして意外なほど役立つのが誘導ライト。「発煙筒」は初心者にとって使うのに勇気がいるものですが、誘導ライトならすぐに使えて、後続車からの視認性は発煙筒と同等かそれ以上です。

エンストするならMT車は避けるべき?

ATはエンストしにくい

MT車はAT車にくらべて圧倒的にエンストしやすいのは、見てきたとおりです。操作がやや難しく、失敗するとエンストしてしまうということ避ける意味でAT車が普及してきたという流れがあります。その後に開発されたCVTやDCTといったトランスミッションも2ペダル(いわゆるクラッチペダルのない、アクセルとブレーキの操作のみで運転できる車)です。またEVも2ペダルが一般的です。こうした状況を見ると2ペダルの方が良いように思えます。しかし、実際はMTの方がお勧めできます。

MT車はメリットが多い

MT車ならではのメリット
  • MT車は燃費が良い(カタログ値ではなく実際の燃費)
  • トランスミッションが軽量
  • 故障時に修理が易しい
  • 走行品質が高い(路面に合わせて適宜ギアを選択可能)
  • 運転時の覚醒度合いが高い
  • 踏み間違い事故を起こしにくい

MT車のメリットを一部考えただけでもこれだけ挙げられます。特に燃費や走行品質に関わる部分でいえば、高速道路で発生する渋滞のひとつ「サグ渋滞」と呼ばれるものは、2ペダル車が増えたことにより発生するようになった現象だと考えられます。MT車でシフトダウンを活用していればこのような事象は起こりません。また社会問題になってる踏み間違い事故も2ペダル車特有のものだと言えます。MT車だとミスをするとエンスト(停止)しますが、AT車だと猛加速していって止まりません。このようなメリットからも、教習所ではMTコースを選択しておくことをお勧めします。

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